教育格差は教育の無償化では埋まらない[HRPニュースファイル1812]

http://hrp-newsfile.jp/2017/3158/

幸福実現党 大阪第5選挙区支部長 数森圭吾

◆歴史的に教育水準が高かった日本

国の教育水準を測る基準の一つに「識字率」があります。

これは文字の読み書きができる人の割合を示すものですが、1850年代のロンドンでは識字率が20%程度であったのに対し、江戸末期にあたる日本においてはその割合が60%以上もあったとされています。

この教育水準の高さを支えたのが「寺子屋」の存在でした。

現在の小学校の数が約20,500なのに対し、当時の寺子屋の数は16,000以上あったといわれています。

江戸時代の人口から考えると、この寺子屋の数は驚くべき数字だと言えます。しかし近年、日本の学力レベルは低下の一途をたどっています。

◆親の収入と子供の学力の関係性

2013年の文部科学省の調査によると、親の年収が200万円未満の家庭と1500万円以上の家庭を比較した場合、子供の学力に差が出ていることが明らかになっています。

調査結果では小学校の算数・中学校の数学において所得の多い家庭の方が低い家庭にくらべて1.5倍以上学力が高いという数字がでているのです。

また東京大学学生生活実態調査(2014年)では東大生の54.8%は親の年収が950万円以上という結果も出ています。

これは読書習慣など親の学習態度なども影響しているといわれているほか、子供が塾や予備校などに通うことのできる経済力の差が大きく影響しているといわれています。

◆教育格差がうむ国家の損失

2015年の日本財団の試算では、貧困状態の子供の教育環境を放置した場合、改善した場合と比較して財政収入に16兆円もの損失が出るというデータもあり、日本の将来を考える上で教育格差は重要な問題の一つであるということが言えるでしょう。

◆教育無償化は格差を埋めるのか?

教育格差とは「生まれ育った環境により、受けることのできる教育に格差が生まれること」をさします。

この教育格差を埋めるための方策として、民進・維新・公明・共産などの各党は「教育無償化」を訴えており、政党によっては大学無償化まで政策として掲げています。

一見、教育を無償化すれば「経済的環境に関係なく誰でも教育をうけることが可能になる」ということでよい政策のように聞こえますが、これで本質的な教育格差が是正され、子供達の未来に可能性が広がるかというと大きな疑問があります。

既述の通り、経済力が高い家庭で育つ子供は学力が高い傾向にあります。これは親の学習習慣や塾など質の高い教育を受けていることが大きく影響しているといわれています。

つまり教育格差の解消における重要なポイントは「教育に対する親の意識」や「教育の質」にあるのではないでしょうか。教育の無償化によって本当に子供達の学力は向上するのでしょうか。

単に「授業料を無償化すればいい」というのはある意味において無責任でさえあるようにさえ感じます。

貧しい家庭の子供であっても、いかに「質の高い教育」を受けることができるか。ここに問題の本質があると思われます。

◆求められる公立学校教育の質の向上

教育格差問題の解決に向け、まず取り組むべきは公立学校の教育レベルの向上だと考えます。

経済的理由で塾に通えない子供でも、公教育で高度な学力到達を目指すことのできる環境こそ重要なのではないでしょうか。

そのためには教員や教育の質を上げるため「教員免許制度の見直し」や「教育方法の自由化」などを進める必要があります。

ただ、公立学校の教員が置かれている労働環境は様々な業務を一人でこなす厳しいものでもあります。教育の質の向上のためには、教員をサポートするための新たな制度構築も必要となるでしょう。

◆無償化ではなく奨学金制度の拡充を

子供たちが家庭の経済環境に関わらず学習意欲を持ち、安心して勉強できる環境をつくるためには奨学金制度の拡充を検討すべきであると思います。

教育無償化は親の教育に対する意識向上や子供の学習意欲向上に対して逆効果になる可能性があります。

奨学金制度を充実させることによって、親の教育意識を低下させず、子供たちが「努力の大切さ」を実感し、学力向上を目指すことのできる制度を模索する必要があるのではないでしょうか。

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