なぜ格差問題は繰り返されるのか[HRPニュースファイル1437]

http://hrp-newsfile.jp/2015/2323/

文/HS政経塾スタッフ 赤塚一範

◆格差問題の根っこ

最近、いくぶん下火(この傾向自体は好ましい)ではありますが繰り返し話題となる格差について考えたいと思います。

格差はなぜ繰り返し問題となるのでしょうか。それは経済学者ハイエクの言葉を借りれば、格差が私たち人間の「原始社会における本能」に根付いており簡単に消し去ることができないからです。

その本能とは簡単に言うならば「村意識」といっても良いでしょう。この「村意識」は小さな共同体を機能させるためには必要なものです。

しかしこの「村意識」が「嫉妬心」と結びついたとき、「みんなと同じが良いこと」「格差は悪」「出る杭はうたれる」という考えとなるのです。このように人間の心の性質が原因となっているため格差は繰り返し問題となります。

◆市場擁護者たちの弱点

また、格差を肯定し市場を重視する人たちの意見が、平等を訴える社会主義者たちほどわかりやすくないため、人々の心をつかめないことも格差問題が再燃しやすい理由として挙げられます。

人はだれでも「自分の賃金は貢献に対して少ない」と思うと不満がでるものですが、格差問題はたいてい「誰がどれだけの賃金を貰うべきか」という「分配の正当性」の問題と関連しています。

格差問題の元祖とも言えるマルクスは「労働こそが生産の根源であり、労働者はその果実すべてを受け取るべきである。資本家は労働者の果実を不当に搾取している」と単純でわかりやすい理論で資本主義の分配システム(市場)を非難しました。

一方、古典的な経済学では、生産は土地、資本、労働の三要素によって行われるとし、市場を通じて、果実は貢献に応じ、地代、利潤、賃金に分配されるとしました。

この説明はかなりの説得力を持ちましたが、現在では必ずしもそう言えなくなっています。そのため、市場を重視する立場から「分配の正当性」を明快に主張しにくいという状況が生まれています。

現代社会の複雑性が分配の正当性を分かりにくくする

それは、現在では、土地、資本、労働に加えて「知識」が重要な生産要素として台頭しているからです。

知識は、新商品のための斬新なアイディアから生産を効率的に行うための技術、マネジメント、企業文化まで幅広い内容で使われますが、このような目に見えない知識が重要な生産要素となる社会では「この生産は誰の貢献か」ということが非常に分かりにくくなってしまうのです。

例えば、アメリカのある会社の経営陣がその会社の平均年収の300倍もの年収を貰うことは、その経営手腕に対してふさわしいかどうか論理的に説明することは非常に難しいでしょう。

そのため多くの人が市場による分配システムに不信感をもってしまうのです。

◆市場の活用度が文明の進歩である

しかしここに大きな落とし穴があります。文明社会を維持するためには、例え受け入れがたくとも市場によって決まる賃金はある程度受け入れなければなりません。なぜなら市場の否定は文明の崩壊を引き起こしてしまうからです。

否定した市場の後に来るものは、政府による理性的で画一的な分配システムの採用です。そしてそれは非効率な社会への逆戻りを意味するのです。

知識が主要な生産要素となった複雑な社会において政府が賃金水準を決める事ほど無謀でおろかなことはありません。むしろ複雑な社会になればなるほど、市場をより重視する必要があるのです。

逆に言えば市場の活用が進めば進むほど、文明はより複雑な社会に対応でき、文明は進歩すると言うこともできます。

◆市場を機能させる政策と祝福の心を

文明を進歩させるためには、アベノミクスで行われた賃上げ要求のような「市場に命令する」政策ではなく、ゲームのルールを作るような市場の枠組みを作るための政策こそ重要です。そのような政策が機能する市場をつくり、民間の力を最大に引き出すのです。

そして繰り返される格差問題から脱するために、私たちは「原始社会の本能」である「村意識」と「嫉妬心」から脱しなければなりません。

そのためのキーワードが「祝福の心」です。アベノミクスで経済は活気づいたようにも見えますが、しょせん官製景気であり、いつ格差問題が再燃してもおかしくありません。

私たち国民の「祝福の心」を鼓舞し、機能する市場をつくりだす政策を中心にすることで日本は本当の意味で復活を果たし、停滞した文明を前進させることができるのです。

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